開発理念


人類が経験してきたコミュニケーションの変化。

人類史上、私たちはコミュニケーションの質的変化を二度経験してきました。一度目は話し言葉=音声言語、二度目は書き言葉=文字の発明です。検索エンジンは、三度目の質的変化であると考えています。

音声言語が使えるようになることで、人間は抽象的な事柄やものごとの複雑な関係を表現する力を飛躍的に高め、時間・空間を共有する人同士のコミュニケーションを発達させました。また、文字を手に入れてからは、時間・空間の制約を超えた情報伝達が可能になり、情報の送り手と受け手の距離と、一人の送り手が伝えることができる相手の数は、無限の広がりを見せるようになりました。送り手を離れた情報は、どこまでも遠くへ、不特定多数の人間へと伝わる可能性を持つようになったのです。

その後に発明された、印刷、写真、電信、映画、テレビ、PCによる通信などは、文字が引き起こした質的変化の延長線上にある、量的な変化として位置づけることができます。これらの発明は、情報の流通量を劇的に変化させたと考えられるからです。

「多:1」のコミュニケーションを支える検索技術

しかし、現在の私たちは、三度目の質的変化を迎えています。
そして、人類のコミュニケーションの三度目の質的変化はを引き起こすものこそが、検索エンジン*です。

音声言語は時間と場所を共有する他者との1対1のコミュニケーションを、文字とその延長線上にある通信手段は、1対多のコミュニケーションを可能にしました。このふたつは、1つの発信元が多数に伝えるということを前提としていました。しかし、検索エンジンは、情報の取捨選択を支援することで、人間の情報処理能力の限界を補い、「多:1」のコミュニケーションを可能にしています。つまり、検索エンジンを通じたコミュニケーションは、多数の発信者が1人に対して語りかけるという、まったく新しいコミュニケーションの構図を可能にするような質的変化をもたらしているのです。

検索エンジンの歴史は、まだ浅く1世紀にも満たないものです。音声言語、文字というツールが、何万年もの時を重ねてかたち作られ、また習得されてきたことを考えれば、検索エンジンがもたらす「多:1」のコミュニケーションの発達にも、いま少し時間が必要でしょう。でも、エンジンとユーザーの双方による変革、習得が重ねられたとき、人類のコミュニケーションは新しい時代へとその一歩を踏み出す時がやってきます。

革新的な発明は、一人の天才の力だけではなく、多くの人とアイディアに触れることによって生み出されてきました。検索エンジンもまた、そのような出会いの中で発達していくのだと思います。そうして、検索エンジンが「多:1」のコミュニケーションを成熟させたとき、人類の持つ能力はさらに高い次元へと押し上げていくことができるのではないかと思います。

検索エンジンを、コミュニケーションの質的変化を促すものとしてみたときに、いったいどんなエンジンであればよいのだろう? 私たちは、このような視点に立ったうえで、自分たちのアイディアを実現するための機能を組み込みながら、Sennaの開発を続けています。

* ここでは、検索エンジン=諸技術(計算機、電子化文書、ネットワーク、WWW、データベース、自然言語処理、AI、機械学習、分散処理など)の総体と位置づけています。